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横浜地方裁判所 昭和58年(わ)2610号 判決 1984年4月17日

裁判所書記官

内山三男

(一)本店所在地

横浜市港南区上大岡西一丁目一四番八号

商号

有限会社 ハイライト

代表者

盧九容

(二)国籍

韓国

住居

横浜市港南区日野町一一六番地

会社役員

岡村九容こと 盧九容

一九一八年一二月二五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官林菜つみ出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社ハイライトを罰金一、二〇〇万円に同盧を懲役一年に各処する。

被告人廬に対し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社ハイライトは、横浜市港南区上大岡西一丁目一四番八号に本店を置き、遊技場経営等を目的とする有限会社であり、被告人廬九容は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人廬九容は、同会社の業務に関し、法人税を免れることを企て、売上の一部を除外して被告人廬九容を含む出資者三名で分配するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が五五六四万五七四五円で、これに対する法人税額が一八四五万二四〇〇円であるのにかかわらず、同五七年二月二四日、同市南区南太田町二丁目一二四番一号所在の所轄横浜南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が零で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、法人税一八四五万二四〇〇円を免れ、

第二、昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が九五八一万九四八八円で、これに対する法人税額が三〇四八万七八〇〇円であるのにかかわらず、同五八年二月二五日、前記横浜南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一一八〇万三九八八円で、これに対する法人税額が三七七万八五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、法人税二六七〇万九三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき

一  被告人廬の当公判廷における供述

一  被告人廬の検察官に対する供述調書二通

一  岡村九容こと被告人廬の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一  大蔵事務官作成の告発書、脱税額計算書説明資料及び写真撮影調書

一  佐久間英子の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  佐久間英子、盧在態、片山敏雄、李正圭、吉川文雄、土屋初久及び末松美樹の検察官に対する各供述調書

一  登記官作成の登記簿謄本

第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五六年一月一日 至昭和五六年一二月三一日分)

一  押収にかかる法人税確定申告書一袋(昭和五九年押第七八号の二)

第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五七年一月一日 至昭和五七年一二月三一日分)

一  押収にかかる法人税確定申告書一袋(前記押号の一)

(量刑の理由)

本件は、その脱税の手口の巧妙さ、脱税金額、その他検察官が論告において指摘する諸事情に鑑みれば、その犯情は、決して芳しいものではなく、被告人盧に対する求刑は、まことに相当であると認められるが、本件摘発後、本件弁護人の適切な指導により、捜査に協力し、かつ、本件起訴にかかる分だけでなく昭和五五年分にまでさかのぼつて修正申告のうえ、本件が起訴される前の昭和五八年一一月二九日には全額の納付を終え、また、昭和五八年分についても本件弁護人を介して正しい申告をしたなどの情状に鑑みれば、被告人有限会社ハイライトに対する罰金額については酌量の余地があると認められるので、主文第一項の金額にとどめることとすると共に、被告人廬に対しても刑の執行を猶予するのが相当と認められるので、主文第二項のとおり執行猶予の言渡しをすることとした。

(法令の適用)

法律に照らすと、被告人廬の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中各懲役刑を選択し、右は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の重いと認める第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用して本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、法人税法一六四条一項により被告人廬を罰するほか被告人廬に適用した法条の罰金刑を科することとし、法人税法一五九条一項、二項により情状を考慮し各罪の罰金額は、各その免れた法人税の額に相当する金額以下としたうえ、右は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により右罰金の合算額以下の範囲内において被告人有限会社ハイライトを罰金一、二〇〇万円に処することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 奥村誠)

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